2016.04.05
プレミアリーグのレスターが、チャンピオンらしくみえてきた。
残り試合が少なくなった段階でこれだけ勝ち点をあげているのだから、優勝するだろうと言いたいわけではない。今のレスターは、チャンピオンとなるチームの特徴を兼ねそなえているという意味だ。たとえば──
締めはしっかり。レスターはシーズンを自分たちのものにしつつある。ライバルたちがレスターに何試合か負けてほしいと祈るしかない終盤の局面で、最大稼ぐことができた勝ち点18のうち16点を手にした。
勝利をたぐり寄せることができる。レスターは最近6試合のうち5試合を、1-0で勝っている。最も「効率のいい」スコアだ(ジョージ・グレアムが率いていたころのアーセナルも1-0の勝利が多いことで知られていたが、やがては2016年のレスターが「1-0勝ち」の代名詞になるかもしれない)。
「回復力」がある。レスターが崩れるとしたら、96分めに失点して(なんとも心苦しいが)アーセナルに敗れたバレンタインデーのあとだったろう。だがその後、レスターは1敗もしていない。
落ち着きが見える。レスターはアーセナルに敗れたあとの6試合に負けていないだけではない。プレミアリーグでは、アーセナル戦の前の7試合にも負けていない。つまりここ14試合のうち敗れた試合は、最後の40分を10人で戦った1試合だけなのだ。まぐれだなどとは、もう言えないだろう。
ディフェンスが「締まり屋」。クリスマス以後のリーグ戦(15試合)で、レスターは7ゴールしか許していない。
その時々でヒーローが代わる。シーズンの前半のほうは、ジェイミー・バーディーの活躍がレスター躍進のカギだと思えた。彼は11試合連続でゴールを決めた(プレミアリーグの新記録だ)。しかし、マフレズも今季16ゴールを決めている(アーセナルで最も得点をあげている選手より4ゴール多い)。マンチェスター・シティにみごとに勝った試合では、ベテランDFのフートが2ゴールを決めた。直近で「1-0勝ち」をおさめたサウサンプトン戦では、キャプテンのモーガンが今季初得点を決めた。ニューカッスル戦では、岡崎が決めている。
ピッチのどこにもスキがない。GKのシュマイケルは決定的なセーブをしているし、カンテは解説者の受けがとてもいいし、ドリンクウォーターはイングランド代表に招集されたし……。
ライバルがレスターより下手。こう書くと当たり前の話に思えるかもしれないが、じっさい今シーズンは優勝争いの常連クラブがどこもよくない。マンチェスター・シティは安定せず、マンチェスター・ユナイテッドとチェルシーは驚くほどひどい出来で、アーセナルはみずからチャンスをつぶしてしまった。スパーズ(トッテナム)がこれほど好成績をあげているシーズンはじつに久しぶり……なのだが、勝ち点ではレスターに7点離されている。
とはいうものの、レスターがこれほど躍進した要因には、まったくもって首をひねっている。
1970年、ロンドン東部のロムフォード生まれ。オックスフォード大学で古代史と近代史を専攻。92年来日し、『ニューズウィーク日本版』記者、英紙『デイリーテレグラフ』東京特派員を経て、フリージャーナリストに。著書に『「ニッポン社会」入門』、『新「ニッポン社会」入門』、『驚きの英国史』、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの<すきま>』など。最新刊は『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(小社刊)