2017.04.23
経営難からだめになったクラブについて書いたら、ある友人に、リーズ・ユナイテッドの話を出さなかったのは納得がいかないと言われた。2001-02シーズンにはチャンピオンズリーグの準決勝で戦っていたのに、財政破綻に見舞われて主力選手を放出せざるをえず、FAから財務管理の失敗の罰として勝ち点をはく奪されて、2007年に(イングランドのプロサッカーリーグの3部にあたる)リーグ1への降格が決まった。それから(2部にあたる)フットボールリーグ・チャンピオンシップに昇格を果たし、今年はプレミアリーグへの復帰の望みがわずかながらもあるが、輝かしい歴史を誇る、多くのサポーターに支えられたクラブが失脚して久しい。
じつは話に出してもよかったクラブは、ほかにいくつもある。最近ではレイトン・オリエントの財政面の混乱とひどい戦績が伝えられている。レイトンは同じロンドンの有名クラブ(アーセナル、チェルシー、スパーズなど)にくらべれば"雑魚"だが、家族連れのファンをだいじにするという評判の、人気のあるクラブだ。2011年にはFAカップの5回戦でアーセナルと引き分け(再試合で敗退)、2014年には惜しくもPK戦で2部昇格を逃した。いまのレイトンの未来は不透明で、リーグ2の最下位に沈んでいる。先日はチームドクターが給与の不払いで辞めたというニュースが報じられた。
スコティッシュ・プレミアシップ(1部)でなんと54回も優勝したグラスゴー・レンジャーズは、2011年の破産後にスコティッシュ・フットボールリーグの3部(実質4部)への降格が決まり、今シーズンからようやく1部に復帰した。このブログを書いている時点でレンジャーズは3位、復活を遂げたとも言える。だが1位の宿敵セルティックに35ポイントもの差をつけられている。
同様に、サウサンプトンも2009年に(破産で)リーグ1に降格してから、なんとかプレミアリーグへ復帰を果たし、今は一丸となって戦っている。この十数年のサウサンプトンは、フットボールクラブの経営のお手本でもあり、反面教師でもある。
"逆"の例がないか考えてみた。つまり(金に糸目をつけないビリオネアのパトロンのおかげでトップにのし上がるのではなく)、賢明な経営で地道に昇格していったクラブだ。ボーンマスが頭に浮かんだのは、歴史が浅く、かなり小さな町(イングランド南部の海岸のリゾート地)が拠点なので、サポーターの大軍団や地元の大企業の支援を受けているわけではないからだ。
ボーンマスは現在、プレミアリーグで二度めのシーズンを過ごしていて、降格の危機にもさらされていない。昨シーズンにレスターの奇跡の優勝がなかったら、ボーンマスがトップリーグに昇格して地位を確保し――しかも有名クラブにとってしぶとい難敵になっているという、とてつもない偉業がもっと話題になっていたんじゃないかと思う。
だが調べてみたら、ボーンマスも2008年の(破産による)壊滅状態を経て、今の隆盛があるのだった。
1970年、ロンドン東部のロムフォード生まれ。オックスフォード大学で古代史と近代史を専攻。92年来日し、『ニューズウィーク日本版』記者、英紙『デイリーテレグラフ』東京特派員を経て、フリージャーナリストに。著書に『「ニッポン社会」入門』、『新「ニッポン社会」入門』、『驚きの英国史』、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの<すきま>』など。最新刊は『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(小社刊)