2020.08.25
前座の落語や講談に始まり、二ツ目、真打と続き、合間に漫才、紙切り、太神楽曲芸、音曲などの色物が入り、いろいろあって最後は真打の落語や講談がトリをとるというのが寄席の番組のスタンダード。
これが夏休みなどは、ちょっと目先を変えて、トリの師匠が終わった後に余興の一幕を入れることがある。この余興を「大喜利」という。もとは「大切」なのだが、そこは縁起を担ぐ興行の世界のこと。わざわざ「喜」や「利」の字を当てているというわけだ。
さて、「大喜利」というと、どこかの番組でおなじみの座布団のやり取りを思い浮かべる人は多いと思うが、それだけに限ったわけではない。バンド演奏あり、賑やかな総踊りあり、芝居あり、じつにさまざまで、芸人が余芸としてそれを演じるから必ず笑いもある。代表的な大喜利の番組は、次の通りだ。
夏の暑い時期に大喜利の番組が多いのは、かつてクーラーのなかった時代、余興で人を呼ぼうとしたことの名残りでもある。また浅草演芸ホールでの催しが多いのは、ここがもともとはレビューやコント芝居の劇場であるために舞台の間口が広く、大勢の芸人がワッと賑やかにやるような趣向が映えるからだ。
大喜利の余興は20分くらいで終わるものもあれば、30分以上かけてたっぷり見せるものもある。落語や色物芸をたっぷり楽しんだ後、さらに音楽や芝居などのオマケがつく、寄席ファンにとってのお祭りのようなものだ。ふだんとは別の素顔が見えることもあるし、大喜利のある日に寄席に行くと、「芸人は何でもやっておかないといけないのだなあ」と、ちょっとため息が出る。
このほかに、国立演芸場2月中席の「鹿芝居」(主任/金原亭馬生師匠)も、ある意味では大喜利的な番組だ。噺家が芝居をするから「鹿芝居」。出し物はオリジナル脚本による歌舞伎のパロディーが多いが、ちゃんと稽古をして、衣装・道具なども本格的なものを揃え、見どころは多い。こちらもいつか機会があれば、ぜひ。
浅草演芸ホール、2018年7月のアロハマンダラーズ
1961年東京生まれ。出版社勤務からフリーランスに。編集者、伝記作家。著書に『寄席の底ぢから』(三賢社)。落語は好きで、DVDブック『立川談志全集 よみがえる若き日の名人芸』(NHK出版)や、『談四楼がやってきた!』(音楽出版社)の製作に携わる。ほかに水木しげる著『ゲゲゲの人生 わが道を行く』、ポスターハリスカンパニーの笹目浩之著『ポスターを貼って生きてきた』、金田一秀穂監修『日本のもと 日本語』などを構成・編集。